ボディランゲージが分かりにくい犬 尾形聡子

犬と一緒に暮らしているならば、誰しも必ず犬との問題に直面することがあるはずだ。
病気のこと、しつけのこと、トレーニングのことなど、長期的に継続するようなものもあれば、その場限りのものもある。犬たちに問題がある場合もあれば、人に問題がある場合もある。

しかし、これらのような悩み的な問題ではなく、今の犬たちと暮らし始めて大変だと感じたことが幾度かあった。
そのひとつが、ボディランゲージが分かりにくいことだった。

私が一緒に暮らすスパニッシュ・ウォーター・ドッグ(SWD)という犬種は、毛が抜けずに伸びていく。強いくせ毛のため毛が体に沿ってサラリとたれ下がるようなことはなく、毛が伸びていくにつれ体のアウトラインが膨らむようにして大きくなっていく。つまり、毛が伸びてくると体が隠されてしまい、ちょっとした動きが見えにくくなってくるのだ。

これはプードルのような犬種にも言えることだろう。だが、さらによくないことに、うちのSWDたちには尻尾がほとんどない。断尾が禁止されつつある風潮の中、私がSWDを迎えた当初はちょうどその過渡期にあり、SWDのスタンダードには断尾することと盛り込まれていた。断尾されている彼らの短い尻尾はもれなく、毛の成長と共に隠されていってしまう。

毛が伸びていけば目も隠れ、耳の動きも分かりにくくなる。口元だってよくわからない。ほとんど変わらないのは舌を出す様子ぐらいだろうか。毛の短い時期でも、背中の毛が逆立つこともない。

巻き毛の犬と暮らすのは初めてだったから、このボディランゲージの分かりにくさは想像以上に大変だと感じた。

Photo: Satoko Ogata

しかしそうも言っていられない。とにかく犬たちが体から発する言葉を逃したくない一心で、犬たちの体の様子を観察することを心掛けた。毛の短い時期は私にとってご褒美みたいなもので、その時期によく観察してそれぞれの犬の体の動かし方の癖を感覚として刻み込んだ。そうしてだんだんと、毛が伸びてきても中身の様子が想像できるようになっていくことができた。体の向きや頭の位置のなどは毛の長さにあまり影響を受けないため、巻き毛犬には押さえておくべき重要なポイントだ。

犬の体から発せられている言葉にどれだけ耳を傾けられるか。ボディランゲージを簡単に読み取れない時期がある犬と暮らせたからこそ、その重要性を強く感じられるようになった。そして、その犬だけのボディランゲージの癖を見つけられる至福があるということも。

2016年 11月