唸る犬はいい犬?! ベックマン美穂

犬の唸り声を聞いたときあなたはどう感じるだろうか?

                                            Photo: Rikako Fujita

一般的に人間は動物の唸り声を聞いたときに「危険」を感じるように刷り込まれているらしい。これは長い人間の進化の歴史の中、生き延びるためにそうなったと聞く。ただこの「危険」を感じる部分が21世紀の現代において、犬とのやり取りの時に誤解の一因となっていることがある。

犬は遊んでいるときにも唸り声に似た声を出すことがある。特にサイズの大きい犬になればなるほど、この声がとてもイカツク聞こえることがあるのだが、それを聞いても、犬と暮らしたことがある人たちなら「危険」を感じない。ということは、人間も犬の唸り声の聞き分けができているからだ。今回の話はこの遊びのときに発せられる声を除いた、人間が「危険」と感じるほうの唸り声の話をしたい。

テラカニファンの方であればご存じであろう、カーミング シグナルで有名な ノルウェーの Turid Rugaas(トゥーリッド・ルーガス) 女史曰く、「もし、あなたが唸る犬に出会ったり、あなたの犬が唸ったりした場合、あなたはとてもラッキーなのだと思ったほうがいい。なぜなら、その犬は親切にも、一生懸命あなたに警告してくれているのだから…」だそうだ。
この言葉の背景には、犬が本来持つコミュニケーション方法の解釈と理解がある。現在は広く知られている事だが、犬の唸る行為は攻撃的な行動に及ぶ前の、攻撃をできるだけ回避したい旨を伝えているものだという解釈だ。人間の言葉に変えてみると、おおむね「それ以上こちらにくるな!」、「それは止めて!」、「痛い事しないで!」等々、対象物や対象者を止めたい、対立を避けたいときに使われていることが多い。

犬は大きなストレスなどがかかっていない普通の状態ならば、実に根気よく段階をおいながら、ボディーランゲージを駆使して気持ちを伝えてくる動物だ。いきなりがぶっと咬みつくような行為はほとんどないと言っていい。
ただし、段階的に伝えているにも関わらず、全てのコミュニケーションが無視された場合の最終手段として咬むいう行為に及ぶ場合がある。
咬むという行為で嫌な事(者)を排除できた場合、犬は咬むと嫌な事(者)がなくなると学習してしまう。

確かに犬の唸り声を聞いていい気はしないかもしれない。ただ、犬のほうからこれ以上エスカレートするのを望んでない事を伝えているのだから、その意思に耳を傾けて、犬語のひとつとして受け入れてみてはどうだろうか。

一緒に暮らしている犬が唸った場合、犬が何に反応を示しているのかよく見てみよう。もし自分が行っていることに対して唸っているのであれば、とりあえずやっていることを一旦やめてみるといい。なにより犬が唸る状況を作らないことが先決だ。 人間同士だって、こちらの言っていることを聞いて理解してくれる人に対する信頼度は高まるのだから、犬との関係だって同じことではないだろうか。そうして絆というものは深められていくのではないかと思うのだ。

2016年10月